パスタをゆでろ

一方的に話をしたい猫背からの打診

退職をした

4年半務めた会社を辞めた
正社員 給与も悪くない 悪意のない優しいひとたち
最後に相手に伝える感情として優先すべきなのは怒りや恨みではなく
間違いなく感謝であるので

最終出勤日当日はまるで自分の視界が映画になったみたいだった
やたらに解像度がよくて
なんでもない風景が、まるでとても大事であるかのようにふくみをもって
キラキラ輝いてみえた
さよなら さよなら ってこだまする

入りたくて入った会社だった
給与とか退勤時間とかそういった打算もない新卒のときに選んだ会社
私がやりたいことをやれる会社だった

入社したばかりの時に比べれば
事態は好転していたんだろう
仕事の勝手を覚えて 名前を知っている人も増えて
雑談とかもできるようになって
それでも定期的にふられる無茶で私はおそらく確実に摩耗して
その積み重ねでわたしはたぶんご飯が食べられなくなったんだろう

お昼御飯を吐いてしまう生活って
正社員 給与も悪くない 悪意のない優しいひとたち
に囲まれていても
それは私の選ぶ人生じゃないなあって思った

ごはんがたべられるように きちんと眠れるように
迷惑がかからない時期にきちんと引継ぎをしてやめよう
そう決めて
ただそれまで自分が本当にもつのかどうかわからなかった
自分にどれくらいの体力が残っているのか
この海は岸にたどりつくまでにどれくらいあれるのか
深いのか長いのか
暗闇の海をおよぐようだった

昨日、退職できた
よかった

まるで普通の退職だった

みんなに「結婚をするのか」と聞かれた
計画されたようなタイミングでそして私が元気そうに見えたんだろう
それなりに私は「オトナ」をやれていたのかもしれない

退職時にびっくりするくらい モノをもらった
プライベートで会う人なんて一人もいないのに

あと 俳句をもらった
これね、一番うれしかった



やめたら一休みしようかなとおもっていたけれど
元気がむくむくわいてきた。
いい辞めかたができてよかったなって。
仕事や人間に絶望することがなくてよかったなって。

とりあえず次はすぐに海外旅行。